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Diario dei Golosacci
〜 くいしんぼ日記
Vol.1 〜
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◆6月12日◆
マレンマ地方はリナルドのお気に入りの場所の一つです。
紀元前約10世紀から何世紀にもわたってエトルリア人が文明を築き上げた中心地あったため、
岩の上にあちこちに造られた小さな街やその麓には、彼らの遺跡が今でも残っています。
“ロッカ・テデリーギ”“ロッチャ・トラキチダ”“ロッカ・ストラーダ”などなど、
街の名前に“ロッチャ”または“ロッカ”がついているのは、ロッチャ(岩)の上に造られた
から。これらの街を歩くと、道の途中や家の間に岩がむき出していて、“岩の上の街”である
ことを実感できます。また高い所にあるため、これらの街からの眺望はそれはもう
“ファンタスティコ!(すばらしい!)”の一言です。
さてこのマレンマ地方のおいしい郷土料理は、“トルテッリ・アッラ・マレンマーナ”
を含め色々ありますが、代表的なものの一つが“スコティッリャ・ディ・チンギアーレ”
(猪肉の煮込み)です。今では“チンギアーレ・イン・ウミド”という名前でイタリアの
あちこちで食べられ
ますが、もともとはこのマレンマが発祥の地です。
この地方では、もう何世紀にも渡って猪狩りが行われてきました。
まず食べてみて驚くのは、お肉の柔らかさ!(日本で何度か猪肉を食べましたが、固くてあまり
おいしいとは思いませんでした)。
この柔らかさの秘密は、調理法もさることながら、下準備にあるようです。
まず捕ってきた猪をさばいた後、水・ワイン・お酢・ジネプロやロスマリーノなどの香辛料を
混ぜた中に1〜2晩漬け込みます。このように長時間漬け込むことによってお肉がとても柔ら
かくなりしかもよい下味がつくという訳なのですね。
次はいよいよ調理!
みじん切りにしたタマネギを炒めた後、小さく切っておいた猪肉を加えてさらに炒め、塩・胡椒で
味付けします。そこにおいしい赤ワインを加え煮詰めたら、裏ごししたトマトを加えさらにコトコ
ト煮込みます。好みによって、オリーブの実も加えます。
このマレンマ地方の郷土料理は、大抵ポレンタ(トウモロコシ
の粉に水またはスープを加えて火にかけ練り上げたもの)と一緒
に食べます。ワインは、マレンマ地方の赤ワイン“モンテレージ
ョ・ディ・マッサマレンマ”“モンテクッコ”“モッレリー
ノ・ディ・スカンサーノ”がピッタリでしょう。
“オピフィチョ・デル・ボスコ”のマリアさんの“スコティッリ
ャ・ディ・チンギアーレ”も昔ながらの調理法で丁寧に作られ、
フォークで切れるほどお肉が柔らか。
口に入れるとトロリと崩れ、ジュワーっとお肉の旨味が口一杯に広がります。
つけ合わせのポレンタもそれはもうブォーノ!(リナルドも私も実はポレンタはあまり好きじゃな
いんです。が、マリアさんのポレンタは、味も固さも絶妙で食べ始めると止まらないおいしさ!)
佐野さんも“いやー、柔らかいねぇ。どうしてこんなに柔らかくなるのかねぇ・・・”
とおっしゃりながら、かなりの量を食べられました(^_^)。
猪のお肉は固くてまずいと思っている方、ぜひ一度お試しあれ!
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◆6月5日◆
ラビオリ、ご存じですか?
ラビオリは今やイタリア全土で食べられるようになりましたが、生まれたのはマレンマという地
方です。マレンマはトスカーナ州とラッツォ州のちょうど真ん中にあたり、その昔はエトルリ
ア文明の中心地でした。この付近は古代ローマ時代に“トーシャ”と呼ばれていて、それが“ト
スカーナ”という名前として引き継がれたということです。
マレンマ地方では、ラビオリはもともとの名前である“トルテッリ”と呼ばれています。材料も
昔のままで、外側の生地は小麦粉・卵・大さじ何杯かのミルク・少量の塩、内側の詰め物となるも
のはホウレン草・それと同量のリコッタチーズ・卵・塩・胡椒・ナツメグです。ソースは、一番一
般的なのがバターとサルビア。他にクルミのソース、イノシシのお肉のソースともとてもよく合い
ます。
私達がこの“トルテッリ・アッラ・マレンマーナ”を食べたのは、私達にすばらしい乾燥ポルチーニ茸やトマトのジャムを提供しているマリアさんが経営する
トラットリア“G・ボスカッリャ”。トスカーナの田舎をぜひ見
てみたい!と私達のところに滞在してらっしゃる福岡の佐野さん
をご案内したのです(80近いそうですが、一人でリュックをしょって旅行される探求心の強いすばらしい方です)。
彼女がこねたフレッシュなパスタ生地に、地元で作られたリコッ
タチーズとホウレン草の詰め物。ソースは、クルミのソース。
皿により分け、みんなでパクリ。
手作りの生地は、マリアさんの手で薄くのばされ軽い食感。また、塩辛い味付けが多いトスカーナ
のレストランですが、マリアさんの塩加減は日本人にもピッタリ。上にかかっているクルミのソー
スも生クリームを使うところが多いのですが、マリアさんはミルクを使っていてくどくなく最高!
佐野さんもとても満足してくださったご様子でした(^_^)。
春真っ盛りの今は、付近の小さな街で自分の庭で穫れ たバケツ一杯のホウレン草を、ベンチに座っておしゃべり しながらきれいにしているシニョーラ達を見かけることが できます。
食事の後これらの街の一つ“メンサーノ”にご案内した のですが、このようなシニョーラ二人に会うことができま した。二人ともとても人なつっこく、“このホウレン草食 べてみてもいいですか?” という佐野さんに、“どうぞ、どうぞ”と笑顔で応えてくれました
生のままそのホウレン草を口にした佐野さんは“野菜の味がするねぇ・・・”と一言。
花の香り一杯のトスカーナの田舎での一日は、こうして過ぎていきました。
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◆5月29日◆
5年ほど前、“食料品の生産及び包装のための衛生管理に関する法律”なるものが、ヨーロッ
パで制定されました。
でもこの法律、実際には、衛生管理のための機械・設備を備えている大手食品業者に都合よく書か
れたもので、そう大がかりな整備を持つ力のない、でもこつこつと伝統に基づいた手法でおいしー
い食材を作っている小さな食品業者や工房を市場から排除していまう危険をはらんでいました(私
達の意見を言わせていただくと、確かに“衛生管理”はばっちりかもしれませんが、効率重視で保
存料・添加物をバンバン使う大手食品業者の食べ物が、必ずしも“安全”とは言い難いと思うので
すけど・・・)。
この法律によって生産禁止と断定された食品リストにはいくつかイタリアのものも含まれていたの
ですが、“冗談じゃない!”怒ったのが、イタリアの少数(約15%くらいかな)の賢い消費者達でした。
彼らは、ほんの一部の地方でしかも小さな工房で手作業のため少量しか作られていないこれらの食
品が絶滅してしまう、とイタリアの政府に断固抗議したのです。イタリア政府は(珍しく?)これ
らの賢明な消費者の訴えに耳を傾け、法律上生産禁止となった食品の中から、絶滅の恐れのあるも
のを例外とする、という決定をくだしたのでした。
そ・し・て、その“リスト”に含まれていたのが“モルタデッラ・ディ・カンポトスト”です
“モルタデッラ・ディ・カンポトスト”─別名“コッリョーニ・ディ・ムーロ(ラバの金玉 
^_^。)─は、ローマのあるラッツィオ州の隣のアブルッツォ州にあるカンポトスト湖の周辺でのみ生産されます。
しかも生産される量はとっても少なく、その原料となる豚
を育てている農家がそれぞれの牧場の中で製造も販売も
行っているのが普通です。豚はもちろん広々とした場所で
自然の餌のみを与えられ育てられます(間違っても人工の
餌ではありません)。
その豚達の最高の部分を細かく裂いたものを洋なしの形の
袋に詰め、真ん中にこれまた口の中でとろけるほど質のよい脂身を差し込んで作られます。
横に切るとちょうど日の丸の逆になりますね。
この“モルタデッラ・ディ・カンポトスト”のファンは多く、毎年8月の半ばに行われる、この周
辺で生産された“モルタデッラ”のお祭りでも主役的な存在 で、あっという間に売り切れてしまうそうです。
私達は去年の8月の頭に3泊4日でアブルッツォの“ラクイ
ラ”という街に遊びに行ったのですがその帰りこの“モルタデ
ッラ・ディ・カンポトスト”を作っている農家で運良く手に入れ
ることができました。
パンとこれをいくつかスライスしてもらい、アブルッツォ州の雄大な自然を眺めながらのーーん
びりした気分でピクニック。
いやー、幸せですね(^_^)。
今年も行きたいな・・・・・・・
ちょっと余談を。
“食料品の生産及び包装のための衛生管理に関する法律”の制定から5年経ちましたが、リストか
ら外されたこれらの“少量生産のすばらしい食材達”の人気に値をつけた大手食品業者は、“金儲
けになる”と偽物を作り始めたのです。
そのよい例が“ラルド・デ・コロンナータ”(コロンナータのラード)。
本当はカッラーラの近くのコロンナータという街で手間暇がかかるため少量しか生産されないも
のなのですが、なぜかあちこちで大量にしかも高値で売られているのです。
消費者はますます賢くなる必要があるようです(やれやれ・・・)
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◆5月22日◆
今回はフィンレツェだけで食べられるという“ランプレトッド”を紹介します。
私が“ランプレドット”を食べたのは、実は今年の頭でした。それまで名前だけはちらほらと聞い
ていたものの、試したことがなかったのです。ちょっと手を出しかねるというか・・・・・・
まぁとにもかくにも、フィレンツェの人達はこの“ランプレドット”が大好きです。特におじさん達は“ランプレドット”と聞いただけで、目の色を変えます(ほ
んとです)。
お昼時になると、街のあちこちに出ているパニーノの屋台の周り
には、おじさんや若いお兄ちゃん達が無我夢中に“ランプレドッ
ト”のパニーノを頬張ってる光景が見られます。さすがのマクド
ナルドも、この“ランプレドット”には勝ち目はないようです。
一般的には、丸くて白いパンを横に2つに切り、片方に細く切っ
た“ランプレドット”をのせ、お好みで胡椒や唐辛子・“サルサ
・ヴェルデ”(グリーンソース)をかけてもらい、上にかぶせる
パンをちょっと煮込み汁に浸して食べます。
さて、このフィレンツェのおじさんやお兄ちゃん達を夢中にさせている“ランプレドット”って何
でしょう?
じ・つ・は、牛の子宮なんです。
ね。こう聞くと、ちょっと手を出しかねますよね。
でも以外と、もう一つのトスカーナの名物料理“トリッパ”のように腸の一部か胃の一部だと思っ
ているイタリア人も少なくないようです。リナルドも最近になって牛の子宮だったと知ったようで
す。
ま、どちらにしても、ちょっと・・・・ね。
でも、フィレンツェの名物を食べないわけにはいかない!と、リナルドがここのが一番おいしいと
思うと言う、中央市場にある“ネルボーネ”に買いに行きました。
本当は1月にキャンティのトラットリアの“ネルボーネ”でも食べたのですが、この時はパニーノ
でなかったせいか、“ふむ、以外とおいしいんだね”くらいで、フィレンツェのおじさん達のよう
に“目がキラキラ!”状態にはなりませんでした。
中央市場の“ネルボーネ”に戻りましょう。
この“ネルボーネ”、創業1872年で、今でも安くておいしい
料理を提供してくれています。フィレンツェのみならずトスカ
ーナのほとんどのレストランやお総菜屋さんが観光客ずれして
高くてまずい料理を出すようになった今日、とっても貴重な存
在です。
そのせいか、“ネルボーネ”の前にはいつも人だかりが。
早く行かないとなくなってしまいます。
“ランプレドットのパニーノ2つください!”。
すばやくお兄さんが、上に書いた要領でパニーノを作ってくれます。
パンは以外と大きくて、直径15センチ以上はありそう。
これでたったの2.3ユーロ(310円)。安いでしょー!
(小さいそれも冷凍のゴムのようなピザで2.5ユーロも取るお店、見習って欲しいですね)
早速アツアツをパクリッ!
“ん?!おいしい!!”
パンが肉汁を吸い込んで、そのままで食べるよりもずっとずっとおいしいです。あー、これならお
じさん達が目の色を変える訳もわかるなぁ・・・・
うん、うん。
フィレンツェにいらっしゃった際には、このフィレンツェのおじさん達のアイドル“ランプレドッ
ト”を試してみられること、お勧めします(*^_^*)。
百聞は一味に如かず??
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◆5月15日◆
今や世界的に有名なキャンティですが、シエナの東に位置する辺りは、まだまだ観光客にあまり知
られていない魅力的な場所が残っています。
リナルドと知り合って間もない去年の4月、私の故郷の宮崎から遊びに来られたご夫婦にトスカー
ナのガイドの仕事を頼まれました。
トスカーナの素敵な場所をよく知っているリナルドに手伝ってもらい、思わず“住んでみたい!”
と思っていまうかわいらしい家が並ぶ“サン・サーノ”という小さな街や、ふるーい館でおいしいキャンティワインを製造している“ボッシ”、リカゾーリ家の人々が住むお城“カステッロ・ディ・ブロイオ”などに案内しました。
“カステッロ・ディ・ブロイオ”は1400年代に建てられましたが、スペイン人が攻めてきた時に取り壊され、1800年頃に再び元の形のまま再現されたそうです。敷地の一部を一般の人に公開していて、城壁からはそれはすばらしいトスカーナの風景を楽しむことができます(入場料は3ユーロでした)。
春のさわやかな日和に、すばらしい景色、おいしい空気・・・・
みんなご機嫌です(^_^)。
“さて、そろそろお昼にしましょう”とリナルドが連れていってくれたのが、“ヴィッラ・ア・
セスタ”という小さな小さな街にある“カッフェ・カメリア”という小さなトラットリア。オー
ナーはロドルフォといって、時々顔を出すリナルドとは顔馴染み。
せっかくだからということで、典型的なトスカーナの料理を少しずついろいろと出してもらい、み
んなで取り分けることにしました(私達日本人は、イタリア人ほど食べられませんからねぇ)。
前菜は、ハムやサラミの盛り合わせと、ペコリーノの盛り合わせ&蜂蜜です。
まずはキャンティワイン・リゼエルヴァで乾杯!
奥さんは“私、チーズはだめなの”とおっしゃっていたのですが、“せっかくですから・・・”と
勧めたところ、“あら、これなら食べれるわ。蜂蜜とよく合うのねぇ”とおいしそうに食べてくだ
さいました。実は、私もチーズに蜂蜜をつけて食べるという食べ方を、この時初めて知ったのでし
た。
次にプリモが3種。
ポルチーニ茸のソースのニョッキ、クルミのソースのニョッキ、イノシシのソースのタッリャテッ
レ。これらも、どれも文句なくブォーノ!
みんな“もうお腹いっぱい!これ以上入らないよ”と言っていたのですが、“取って置きのセコンド があるから、ぜひ食べてよ!”というロドルフォの言葉に、
“それじゃ、後一品だけね”ということに。
しばらくたって、ロドルフォが“どーーん!”と目の前に置いたのが、盛りつけも美しい“フィレット・ディ・マイアーレ・アッラチェート・バルサミコ”(バルサミコ風味豚肉のステーキ)でした。
普通豚のヒレ肉は、オーブンか炭火でシンプルに焼くのが一般的なのですが、ロドルフォはこれをキャンティの典型的な香辛料(コリアンダー・丁子・ビャクシン・唐辛子を混ぜたもの)で何時間が下味をつけ、小さなタマネギと一緒にフライパンで焼き塩で味付けした後、肉が焼き上がる最後の最後でバルサミコ酢をちょっと加えるのだということです。
かなりの厚みがあるお肉を切り、口の中へ。
“うわーっ、やわらかーーーい!!”
中までしっかり火が通っているにもかかわらず、肉汁がジュワーっと口の中に広がり、とろりと溶
けていくような柔らかさ!
こんなに柔らかくておいしい豚肉は、生まれて初めて食べました。それもそのはず、近くの農家で
飼われている豚を、猟師でもあるロドルフォが直接吟味しているのです。キャンティワイン・リゼ
ルヴァとの相性も抜群!
お連れしたご夫婦も“リナルドは本当においしいものを知っているんだねぇ”と、大満足してくだ
さいました。
気取らない小さなトラットリアでの大馳走、最高でした(*^_^*)
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◆5月1日◆
“ペポーゾ”ってご存じですか?
“ペポーゾ”の誕生は、ブルネルスキがフィレンツェのドォーモ“サンタ・マリア・フィオー
レ”の建設に取りかかっていた15世紀までさかのぼります。
その当時、ドォーモの建設にともなって、クーポラに使われるレンガが、フィンレンツェからキャ
ンティに向かう途中にある“フェッローネ”という街で造られていました。クーポラを完成させ
るには約400万個ものレンガが必要で、レンガを焼く職人さん達は、朝も晩も赤々と燃える釜戸の
前で交代でレンガを焼き続けたのでした。この気の遠くなるような重労働の合間に職人さん達が作
って食べていたのが、“ペポーゾ”だったのです。
“ペポーゾ”って何??と先ほどから思っている方も多いはずですので、簡単に説明しますね。
現在一般的に使われている材料は、牛の筋肉・キャンティワイン・黒胡椒の粒・ニンニク・サルビ
ア・ロズマリーノです。胡椒(ペペ)をたくさん使うので“ペポーゾ”という名前がついたそう
です。牛の筋肉を適当な大きさに切って香辛料を混ぜ、そこにキャンティワインをひたひたになる
まで注ぎ、ことことと弱火で固い牛の筋肉がやわらかーくなるまで煮込んでいきます。
レンガ作りの職人さん達は、この“ペポーゾ”をレンガを焼く釜戸の隅に置き、仕事をしながら出
来上がるのを待ったのでした。当時は質の悪い肉が使われていたそうですが、釜戸の隅のごく弱い
熱でゆっくりと時間をかけて作られた“ペポーゾ”は、ブルネルスキも大好物だったというほど、
それはそれはおいしかったといいます。
この“ペポーゾ”、しばらくの間人々に忘れ去られていたのですが、近年になってまた注目される
ようになったそうです。
私達が“ペポーゾ”を食べたのは、フィレンツェの中央市場
にもお店を持つ“ネルボーネ”が、何年か前にグレーヴェ・
イン・キャンティにオープンしたトラットリア。
グレーヴェ・イン・キャンティの広場に面する入り口から中へ
はいると、昔ながらの石造りの壁でとても落ち着いた雰囲気。 ウェイターもとても気さくで感じがよいです。
下手をするとフィレンツェのレストランよりも高いと言われる
グレーヴェ・イン・キャンティのレストランですが、“ネルボ
ーネ”は値段もとても良心的で味も抜群!
それまで一度も“ペポーゾ”を食べたことのなかった私。前からリナルドに話だけは聞いていて、どんな料理が出てくるか興味津々です。
来ました、来ました!
大きなお皿に“どーん!”と盛られた“ペポーゾ”。
さて、お味は?・・・
“ん!ブォーーーーノ!!”
ブルネルスキが食べていた当時と同じ味かどうかはわかりませんが
お肉が舌の上でほろりとやわらかく崩れ、口の中に溶けていきます。思ったほど胡椒の味はきつく
なく、油を使っていないのであっさりしています。
かなりの量でしたが、ブルネルスキの時代に思いを馳せつつ、ぺろりと“ペポーゾ”を平らげた
私達だったのでした。
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◆4月24日◆
先々週の日曜日は、リナルドとかねてから計画していたアシャーノというシエナからさらに南東
に下った小さな街で開かれる市場に行って来ました。
このアシャーノは、イタリアでも最も美しいと言われる“クレテ・セネージ”という地域にあり
ます。リナルドもこのクレテ・セネージをこよなく愛していて、私も何度か連れていってもらいま
したが、この時期に行ったのは初めてでした。
どの季節に行ってもすばらしい景色を楽しむことができますが、4月5月のクレテ・セネージの美
しさは、言葉では言いつくせません。悠々となだらかに続く丘を春の雨の恵みをうけてすくすくと
育った若草が覆いつくし、辺り一面をエメラルド色に染めるのです。その柔らかくておいしーい若
草をあちこちでのんびりと食べる羊達、所々に咲いている黄色や紫や赤の小さな花達。“あー、春
だなぁ・・・”とほんわか優しい気持ちになれます。
さて話をアシャーノのメルカートに戻しましょう。
この市場は、毎月第2日曜日に開かれます。でも4月はちょっと特別なんです。なぜかというと・
・・おいしーい若草を食べた羊のミルクからできるペコリーノが手に入るからなんです!
私達が着いたのは夕方間近。小さな街の路地は、地元の人や周辺の街の人達でごったがえしていました。雑貨を売っているお店もありますが、くいしん坊の私達のお目当てはもちろん食べ物!
まずは、リナルドがここ何年かいつも買っているという
腸詰めに したお肉を売る露店へ。
腸詰めのお肉と言われてもピンとこないかもしれませんね。
いわゆるサラミのようなものです。
丸々と太ったおじさんが“ほいっ!味見してごらん”といくつか切ってくれました。
“うまい!!”(0^-^0)
正直言って、私はあまり腸詰めのお肉が好きではありません油っぽくって口の中がいやーな感じになるのですね。
でも本当においしい腸詰めのお肉というのは、脂身がさらり
と口の中で溶けていき、いくらでも食べれちゃうのです。
ここのおじさんの腸詰めのお肉は塩加減もちょうどよく、お肉の旨味がギュッと詰まっていました
イノシシと豚の腸詰めのお肉を約2キロ近く買って、たったの18ユーロ!
さて、次はペコリーノ。
単にペコリーノと言っても色々な種類があります。私達が選んだのは、若い元気のいい男の子が売
っていたちょっと青かびのようなものが表面をおおっているペコリーノ・フレスコ。これもやはりその
場で味見をさせてくれたのですが、フレッシュな羊のミルクの味が
舌にとろりと溶けていき、ブォーノ!
今までに色々なペコリーノ・フレスコを食べてきましたが、これはそ
れらのどれにも当てはまらない独特の味がしました。外の青かび
のせいでしょうか?塩加減もちょうどよく、いくらでも食べられる
感じです。(ペコリーノに限らず、まずいチーズはやたらしょっぱ
いのですね)
これもホイールごと2つ買いました。ハムもおいしいものが揃ってい
て、イノシシと豚の生ハムもゲット。
いやー、来た甲斐がありました(^_^)。
おいしーい食材を手に入れて、二人とも大大大満足!(^o^)
クレテ・セネージのすばらしい景色の真ん中に車をとめ、持ってきたパンと一緒に、早速これらの
食材に舌づつみ。
“あーーーー、おいしい・・・・・”
ピンク色に染まった空と、ぼんやりと浮かび上がるなだらかな丘をのんびりと眺めながら、幸福感
に浸ったのでした。
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◆4月10日◆
典型的なトスカーナ料理はいろいろありますが、絶対に欠かせないのは“クロスティーニ・トス
カーニ”(トスカーナ風カナッペ)でしょう。
北はムジェッロから南はマレンマ地方、東はカレンティーノから西はヴァル・ディ・チェチ
ナ地方まで、トスカーナ全域で食べられている料理です。
皆さんはもう食べられましたか?
“クロスティーニ・トスカーニ”の歴史は古く、中世の時代までさかのぼります。この料理も、今
までご紹介した料理と同じく、最初は貧しい人達の間で食べられていたものです(何だか、こうい
う料理ばかり選んでいるような・・・・・ ^_^。)。
その当時、農家の人達は、自分達の領主に献上する前に取り除いた動物達の内臓やそれほどおいし
くない部分をもう一度きれいに洗い、自分たちのための料理に使っていました。でも余りものとは
いっても、広々としたところでおいしい空気とえさを食べながら伸び伸びと育った動物達からのも
のですから、現在手に入るお肉よりもずっとおいしかったことでしょう。
“クロスティーニ・トスカーニ”を作るのに最適なのは、鶏のレバーです。
各家庭やレストランによってそれぞれ少しずつ違うのですが、最も一般的な材料は、6人分で鶏の
レバー400g、タマネギ小1個、トマトを茹でて裏ごししたもの200g、スープ300ml、エキストラバージンオリーブオイル大さじ10、ケーパー大さじ1、アンチョビ1匹、塩適量です。これらの材料をコトコトと何時間も煮込んでいきます。
とっても時間のかかる料理のためか、おいしーい“クロスティーニ・トスカーニ”を出すレストラ
ンを見つけるのは、以前ほど簡単ではなくなってきました。
・・・・が、そんな中で“ん?これはおいしい!”と思ったのが、フィレンツェから車で約40分のところにある、レオナルド・ダ・ヴィンチが生まれた小さな街“ヴィンチ”のトラットリア
“ラ・トッレッダ”です。場所は、レオナルド博物館のすぐ近く。こんなに観光客のよく来る場
所でおいしい料理を出すレストランがあるとは、ちょっと驚きでした(最近のフィレンツェのレス
トランの質の低下は、それはすごいのです)。
テーブルについて、ウェイターに言われるまま“アンティ
パスト”(前菜)を注文。しばらくたって“これでもか!”
という量の“アンテイパスト”が次々と目の前に。
ハムは大きな固まりを自分たちで勝手に切ってお皿に盛るんです我らが“クロスティーニ・トスカーニ”は、ソースは冷めない
ようにロウソクを下に置いた器に入れられ、パンは別のお皿で
運ばれてきました。(そう、すでにのせて持ってこられると、
時間がたつうちにパンがベチャベチャになっ てしまい、おいしく
ないんですね。この辺の気配りもグッド!)
一緒に行った両親(特に父)は、目を細めながら“うーん、これうまいねー”と言いながらパクパク。“これこれ、そんなに食べてると、後が入らないよ。これはまだ前菜なんだからね”と言う私
も、負けじとパクパク。(*^_^*)
みんなでお腹一杯になってレストランを出たのでした。
ヴィンチに行かれることがあったら、ぜひこのトスカーナのアンティパスト“クロスティーニ・ト
スカーニ”を試してみて下さいね。
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◆4月2日◆
もう一つ別のリボルノの庶民の味といえば“カッチュッコ”。
“カッチュッコって??”・・・そうですね、あえて別の言葉でいうと“魚介類のスープ”でしょ
うか。でもリボルノの人は、我が“カッチュッコ”が単なる魚介類のスープと分類されるととても自尊心を傷つけられるようです。
“カッチュッコ”は、昔昔リボルノの漁師達が余り物の魚介類を使って作った貧しい人達の食べる
料理でした。それが年月を経るうちに、イタリア全体に知られるようになったのです。何年か前に
ある有名な食料品メーカーが“冷凍カッチュッコ”なるものを販売し始めリボルノの人達を心配さ
せましたが、本物の“カッチュッコ”の味にははるか遠く及ばず、リボルノの人達はますます自分
たちの“カッチュッコ”を誇りに思ったのでした。
さて、普通イタリアのレストランに入ると、前菜・プリモ・セコンド・・・と注文するのが一般的
ですが、“カッチュッコ”を食べるときは、この方式はなくなってしまいます。
“カッチュッコ”だけの一本勝負です。
理由は、“カッチュッコ”が運ばれてくればすぐにわかります。
私とリナルドが行ったのは、“イル・ソットマリーノ”というリナルドのお父さんが若い頃から
馴染みのトラットリアです。おいしい“カッチュッコ”を出すレストランが少なくっている中、今
でも満足できる味を提供してくれます。
席につくなりメニューも見ずに“カッチュッコ1つ!”。
“え、1つ?”と思われるでしょう。
レストランに着く前から、リナルドに“すごい量だから二人で 1つとろう”と言われていたのですが、しばらくして“どとー ーーんっ”と目の前に運ばれてきた“カッチュッコ”を見て納 得。
“おおっ!す、すごいボリューム・・・”(*0*)
ちょっと深めの四角いお皿には、白身魚やタコ・エビ・貝類が“これでもか!”
というくらい大盛りに。
魚介類には目のない私は“おおーーっ”と圧倒されながらも、お皿にもられた “カッチュッコ”をすばやくパクリッ。“う、うまい!!”
トマトをベースにしたスープで煮込んだ魚介類の旨味が口いっぱいに広がって幸せ・・・(*^_^*)
この“カッチュッコ”、一般の人が作るには大変な労力がいると言われています。そこで材料だけ
でもご紹介しましょう。
まず、白身魚(ホシザメ・アンコウ・アナゴなど)、タコ、イカ、エビ。これら全て合わせて約2
キロ。アサリやムール貝。タマネギ大1個、ニンジン1本、セロリ2本、イタリアンパセリ一束、
生姜1かけ、ニンニク3かけ、サルビアの葉3枚、エキストラバージンオリーブオイル大さじ12、
茹でて裏ごししたトマトソース300g、赤ワイン大きなコップ1杯、塩&胡椒適量、です。これら
の材料とコトコトコトコトと煮込んで旨味を出していくのでした。お皿の底にトーストしたパンを
敷き、この煮込んだスープをかければ、“カッチュッコ”の出来あがり!(o^-^o)
私達の隣に座ったおじさんはパンだけ残して他を全部一人で平らげ、オーナーのフルビオに
“おっ、ぜいたくに食ったねっ”とからかわれていました。
このフルビオ、リナルドを小さい頃から知っていて、ちょっとした小話をしてはお客を笑わせ楽しませてくれる、古き良きリボルノ人の気質を持った陽気なおじさんです。
リボルノにいく予定の皆さん、この豪快でおいしい“カッチュッコ”、ぜひ食べてみてくださいね。
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◆3月27日◆
フィレンツェから西に車で1時間半ほど走ったところにある海沿いの街、リボルノ。
トスカーナの街の中でも、イタリア統一前の庶民の気質を色濃く残す数少ない街の一つです。
伝統を大切にするリボルノ人の気質は料理でも触れることができます。
魚料理はもちろんですが、忘れてならないのがリボルノの庶民の味“トルタ・ディ・チェーチ”
(ひよこ豆のトルタ)!“トルタ”と聞くと、甘いお菓子を想像されるかもしれませんが、これは塩味のパンケーキのような形ものです。もともとは貧しい人達の食べる料理として生まれましたが
、今では職業を問わず、あらゆる人々に親しまれている一品です。
この“トルタ・ディ・チェーチ”を作るお店は大体ピザ屋も兼ねており、夕方の6時頃から開店します。有名なのは、オルタンド造船所の近くにある2軒です。私達が食べに行ったのは、このうちの“ピッツァ・エ・トルタ・ダ・ダヴィッド”。
椅子に座り、“トルタ・ディ・チェーチ”を注文。
しばらくすると焼きたてのアツアツの“トルタ・ディ・チェーチ”が放線状に切られて運ばれてきます。
うーーーん・・・・・いい香り(^_^)。
上に胡椒をちょっとふりかけて、口の中へ・・・ブォーノォーー!!
外側は程よくカリッとして、中はしっとり。フカフカの柔らかいフォカッチャ(ピザの生地で作る
薄いパン)にはさんで食べるのもまた美味!。リボルノの人達はこれを“チンクエ・チンクエ”
と呼びます。“トルタ・ディ・チェーチ”がチンクエリレ(5リラ)、フォカッチャがチンクエリ
レ(5リラ)だったことから、この呼び名がついたそうです(安いですねー)。
“トルタ・ディ・チェーチ”の作り方は、とってもシンプル。
材料は、約6人分でひよこ豆の粉〜500g、水〜1.5リットル、エキストラバージンオリーブオイ
ル&塩〜適量。広くて深めのボールに水を入れ、そこに少しづつ木ベラで混ぜながら、ひよこ豆の
粉と塩を加えていきます。ひよこ豆が水によく溶けたら、半日ほど休ませます。型にエキストラバ
ージンオリーブオイルをたらし膜を張ります(少なすぎると生地がくっついてしまうので、たっぷ
りと)。休ませておいた生地をもう一度軽く混ぜた後、型にゆっくりと流し込みます(この時、下
に沈んでいる沈殿物が入らないように注意)。生地の厚さは1センチ程度。最後に上からエキスト
ラバージンオリーブオイルたらし、180〜200度に暖めておいたオーブンに入れ、表面がキツネ色
に焼けたら出来上がり。とっても簡単!そうなのですが、本当においしい“トルタ・ディ・チェー
チ”を作るお店は以外と少なかったりするのです。
皆さんもリボルノに行かれることがあったら、ぜひこの素朴でしかもおいしい“トルタ・ディ・チ
ェーチ”を試してみてくださいね(*^_^*)。
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